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英語学習書の編集者とネイティブ校閲者による英語やアメリカ文化の解説ブログ

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【レビュー】「アメリカ国籍取得テストでアメリカの一般教養と英語を学ぶ」

仕事柄、英語学習関連の本に触れる機会が多いので、読んだなかで良かった本をお勧めしていきたいと思います。

 

本日ご紹介するのは『アメリカ国籍取得テストでアメリカの一般教養と英語を学ぶ』(ベレ出版)です。

 

 

書誌データ

  • 書籍名:「アメリカ国籍取得テストでアメリカの一般教養と英語を学ぶ」
  • 著者:ジェームス・M・バーダマン /マヤ・バーダマン 
  • 出版社:ベレ出版

 

著者について

ジェームス・M・バーダマン 早稲田大学名誉教授

1947年アメリカ・テネシー州生まれ。プリンストン神学校教育専攻、修士ハワイ大学大学院アジア研究専攻、修士。 専門はアメリカ文化史。 著書に『毎日の英文法』『地図で読むアメリカ』(朝日新聞出版)、『日英対訳 世界に紹介したい日本の100人』(山川出版社)、『アメリカ黒人史』『英語の処方箋』(ちくま新書)、『ネイティブが教える 日本人が絶対間違える英語大全』(KADOKAWA)、『3つの基本ルール+αで英語の冠詞はここまで簡単になる』(アルク)、『英語でお悔やみ申し上げます‐冠婚葬祭・非常時の英語表現』(ベレ出版)など多数。 )

マヤ・バーダマン

上智大学卒業。ハワイ大学留学。外資系企業に勤務し、医学英語に携わる。著書に『英語のお手本そのままマネしたい英語の「敬語」集』『英語の気配り マネしたい「マナー」と「話し方」』(朝日新聞出版)、『品格のある英語は武器になる』(宝島社)、『外資系1年目のための英語の教科書』(KADOKAWA)、『人を動かす、気配りの英語表現』(ジャパンタイムズ出版)、『医学英語のお手本』(丸善出版) などがある。

 

アメリカ国籍取得テストでアメリカの一般教養と英語を学ぶ」の目次

  • Part 1  アメリカの基礎知識(地理、国旗、国家、祝日など、基本的な事項)
  • Part 2  アメリカの歴史(植民地時代、独立、南北戦争、2つの大戦、9.11など)
  • Part 3 アメリカ政府と公民(法律、政府、議会、裁判、市民の義務や権利など)
  • Part 4  アメリカをもっと理解するために(学校教育、宗教、銃規制など、現代のアメリカで議論されているトピック)

 

目次はPart1〜Part4から成ります。なかでも一番多くページを割いているのがPart2の「アメリカの歴史」です大陸発見、植民地から始まり、独立宣言、南北戦争第一次世界大戦第二次世界大戦など、アメリカ史における主要な出来事を網羅しています。

大陸発見から現代まで、歴史を網羅して易しく解説しているよ。

そもそもアメリカ国籍取得テスト(Citizenship Test)とは?

アメリカ国籍取得テストとは、申請によってアメリカの国籍を取得したい人が受けるテストです。そのテストで、一般常識を問う質疑応答面接が行われます。本書では、「アメリカ国籍取得テストに出題されるようなアメリカの一般教養を英語で学びましょう」というコンセプトで書かれています。本書はアメリカ国籍取得テストに合格するための対策本ではないので注意してください。

簡単な英語でアメリカ一般教養を学べる

バーダマン先生が英語学習者のために意識してシンプルな英語で執筆しています。なかには歴史的な用語など専門用語もありますが、日本語訳とボキャブラリーがあるので、都度確認しながら学習を進められます。

 

「最初のアメリカ人」という項目の出だしを紹介します。

Children often learn that Columbus "discovered" America, but  that is not true. There were already people living there before he and other Europeans came.

子どもたちは、コロンブスアメリカを「発見した」と教わりますが、実はそれは正確ではありません。コロンブスをはじめ他のヨーロッパ人が到着する前からそこには人々が住んでいました。

このように比較的簡単な単語と構文からなる文章なので、気負わず学習できます。

これなら肩肘張らずに取り組めそう!

1つの出来事ごとに見開き2ページの展開です。例えば「The First Americans(最初のアメリカ人)」なら左ページに英文での説明が、右ページに和訳とボキャブラリーが掲載されています。

1つのトピックに対する英文のボリュームは100words程度です。多くても200wordsほどなので、英語の初心者の方でもチャレンジしやすいはずです。

 

文字数が少ない分、内容はあくまでも「基本のき」です。アメリカ文化や歴史を深く細かく学びたいという方には物足りないかもしれません。まずはアメリカ史をざっと網羅したい、アメリカ人が初等教育で当たり前に身につけている一般常識を知りたい方にオススメです。まずは網羅した上で気になるトピックが見つかったら、その分野に関する新書など、他の本で知識を深めるのもいいかもしれません。

自分が掘り下げたい分野を知るためにも、基本を網羅するのはいいかもね

現代のアメリカの問題も学べる

本書が一番力を入れているのはアメリカ史の章ですが、現代の制度や問題に関するトピックもあります。

 

例えば、Gun Regulations(銃規制)について。連日銃乱射で子どもを含む多くの市民が犠牲になっているニュースが報じられているにも関わらず、アメリカでは銃規制が進みません。多くの日本人からすれば「一刻も早く法改正して規制を厳しくすればいいのに。なんで?」と思うところです。本文では、なぜ規制が進まないか、アメリカ独立戦争にまで遡って、簡潔に経緯と理由が書かれています(現代の問題っといっても、歴史が深く関わっているのです)。

銃規制が進まない理由って何だろう??

そのほか、アメリカの議会の制度、共和党民主党についてなどのトピックもあります。こういった現代のアメリカの制度に関する基礎知識を整えておけば、アメリカのニュースに対する理解度が上がるはずです。実際、私は毎日NBCとABC newsのPodcastを聞いているのですが、本書を読むことでアメリカの現代に関する背景知識がついたので、ニュースの理解度が上がりました。

 

一般教養を身につければコミュニケーションが円滑に

英語を学習していても、「アメリカの歴史や一般教養に興味がない」人もいるかもしれません。しかし日本人の英語学習者が、大多数のアメリカ人なら自然に身につけている一般教養を身につけておくと彼らと話すときの武器になる、と私は思っています。

 

少し乱暴な言い方になりますが、日本語で日本人と話すときも、あまりにも常識や教養が抜け落ちている人とだと、話が弾まないし、仲が深まりにくいのではないでしょうか。

 

英語がどんなに流暢でペラペラでも、彼らの最低限の背景を知っていないと、上辺の会話になって、ゆくゆくはごまかしが効かなくなるはずです。

 

そうならないためにと、気合いを入れてアメリカの知識をつけようと専門書を漁ったところで、難しくて挫折してしまうかもしれません...なので、まずは最低限のアメリカ教養を身に付けるのが得策ではないでしょうか。そういったときに最適なのが本書だと思います。