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ミッシェル・オバマから学ぶ 選挙の英語表現

 

今年はアメリカの選挙イヤーなので、先日も選挙にまつわる英語表現を紹介する記事を更新しました。アメリカの選挙制度や基本的な選挙用語はこちらの記事で学べます。

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本記事では、もっと選挙表現を学んで行きたい方向けに、ミッシェル・オバマ氏のBecomingから抜粋して選挙にまつわる表現を紹介していきます。彼女の自伝であるBecomingのなかでは、バラク・オバマ氏が立候補して選挙を制し、大統領に就任する過程が生き生きと回顧されています。全部で450ページほどありますが、英文自体はシンプルで読みやすいので、英語学習にもお勧めです。

 

 

民主党内の熾烈な指名争い

では、早速役立ちそうな英語表現を見ていきましょう。

Hillary Clinton was a serious and formidable opponent.

ヒラリー・クリントンは本当に恐るべき強敵だった。

Obama, Michelle. Becoming (p.233). Crown. Kindle 版. 

オバマ民主党内の代表争いでヒラリー・クリントンと戦いました。ミッシェルはヒラリーをformidableと形容しています。この単語は「相手が強いために、fear(恐怖)だけではなくrespect(尊敬)の気持ちも抱くとき」に使われます。

 

 

In poll after poll, she held a commanding lead among the country’s potential Democratic primary voters, with Barack lagging ten or twenty points behind,...

毎回の世論調査では、彼女は民主党予備選挙との有権者の間で圧倒的な支持を保持し、バラクは20ポイント遅れを取っていた。

Obama, Michelle. Becoming (p.233). Crown. Kindle 版. 

she(彼女)とは、もちろんヒラリーのことです。primaryは「予備選挙ですね。この通り、当時オバマ民主党のなかで有力候補ではありませんでした。日本にはない予備選挙については、こちらの記事で解説しています。

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For Barack, and for every candidate not named Clinton, the only hope for winning the nomination was to raise a lot of money and start spending it fast, hoping that a strong performance in the earliest primaries would give the campaign enough momentum to slingshot past the Clinton machine.

ラククリントンという名前ではない全候補者にとって、指名を獲得する唯一の希望は、多額の資金を集めて速やかに使い始め、最初の予備選でよい結果を出し、それが選挙戦に勢いを与えてクリントン陣営を追い抜くことを期待することだった。

Obama, Michelle. Becoming (p.233). Crown. Kindle 版. 

nominationは、ここでは民主党内における「指名」を意味します。党内の代表として指名を得るには、莫大な資金を集め、それを使い、初期の段階での予備選挙で優位に立たなければいけないということです。

momentumは直訳すると「はずみ、勢い」。選挙関連のニュースで頻繁に耳にする単語なので是非とも覚えておきたいです。

 

一番の注目を集めるアイオワ州予備選挙

Members of both parties cast their votes at precinct-level meetings—caucuses—in the middle of winter, and the whole nation paid attention.

両党の党員は、真冬の選挙区レベルの集会、いわゆる党員集会で投票を行い、全米が注目した。

Obama, Michelle. Becoming (p.233). Crown. Kindle 版. 

これは選挙戦が本格的に開戦する州として有名なアイオワ州に関する描写です。党員集会は、学校などで候補者を支持する党員が意見を述べるのを住民が聞き、議論をするなかで、どの候補者を支持するか決めていきます。それぞれの支持者数に応じて、代議員数が決定します。最初に党員集会が開催されるアイオワ州の結果は、今後の選挙戦の行方を決める指標となるため一番の注目を集めるのです。

 

ちなみに、Becomingの中で、ミッシェルは「アイオワの人々は自身をpolitical trendsettersと見なしている」と記述しています。

 

Crazy rumors swirled about Barack: that he’d been schooled in a radical Muslim madrassa and sworn into the Senate on a Koran.

ラクについては、イスラム過激派のマドラサで教育を受け、コーランを掲げて上院議員に宣誓就任したという、おかしな噂が渦巻いていた。

Obama, Michelle. Becoming (p.242). Crown. Kindle 版. 

初の黒人大統領を目指すバラク・オバマ氏に対する風当たりは強かったようで、根も葉もない噂が多く流れました。オバマ氏は身の危険を感じ、選挙活動中にセキュリティ・サービスを雇い始めます。まだ大統領になっていない段階でのセキュリティ導入は異例のことだとか。根強い差別意識が残るアメリカを象徴しています。

 

swear in 〜で、「〜を宣誓就任させる」という意味になります。上に挙げた例文ではhe'd been sworn into 〜、つまり受け身の形になっています。ケンブリッジ辞書には、Obama was sworn in as president.オバマは大統領として宣誓就任した)と例文が紹介されています。

 

“I don’t want to spend the next year or the next four years refighting the same fights that we had in the 1990s,” he said. “I don’t want to pit  Red America against Blue America, I want to be the president of the United States of America.”

Obama, Michelle. Becoming (p.246). Crown. Kindle 版. 

「次の1年、あるいは次の4年を、1990年代と同じような戦いに費やしたくはない」と彼は言った。「私は共和党民主党を戦わせたくない。私はアメリカ合衆国の大統領になりたいのだ」

the Jefferson-Jackson dinner民主党候補者が1人ずつスピーチしたときのバラク・オバマ氏の言葉です。ヒラリー・クリントン氏をはじめとした他の候補者に差をつけれられていましたオバマ氏ですが、このスピーチをきっかけに、攻勢に転じました。Redは共和党を、Blueは民主党を表します

 

英語表現も押さえておきましょう。pit 〜 against ...で「〜を...と戦わせる」です。

 

なお、Becomingの中では、このときの会場の盛り上がりをThe auditorium thundered.(観客席は轟音を立てた)と表現しています。

 

勝利演説と敗北演説を英語で言うと...?

That night at Barack’s victory speech, as the four of us—Barack, me, Malia, Sasha—stood onstage at Hy-Vee Hall, I felt great, even a little chastened.

Obama, Michelle. Becoming (p.248). Crown. Kindle 版. 

先のスピーチで聴衆を惹きつけたオバマ氏はオハイオ州予備選挙を制します。なお、victory speech (勝利演説)の反対語はconcession speech(敗北演説)です。アメリカの大統領選では、投票の結果を受けて敗者も演説を行う習わしはあります。

 

以上、Becomingで2008年米選挙の前半戦を振り返りつつ英語表現を紹介してきました。まだ民主党内で代表争いをしている段階までしか紹介できていないので、それ以降は別記事でご紹介予定です。

 

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